5.福島っ子キャンプ物語

~福島の子ども達との縁とキャンプに至るまで~
2011年6月、3月11日に発生した東日本大震災の復興支援の為に東北に入っていた私は、仙台での支援団体会議で、「どうも福島が危ない」「子ども達をどうにかしないといけない」という声を耳にしました。
福島はそんなにひどいの?と尋ねると、放射能汚染の真実がどんどん明らかになるにつれ、放射線被ばくへの影響や不安が増し、福島を離れる人たちが日増しに増えているけど、福島を離れられない人達もたくさんみえ、その中で、被ばくの影響を受けやすい子ども達だけでも助けてほしいという願いを持った親たちが、たくさんみえるという事でした。
それを聞いて、福島の子ども達やその家族の為に何かをしなければいけないと思い立ち、福島で、子ども達を放射能から守ろうと奔走されているNPO代表の煙山さんに連絡をとると、「子ども達を福島から避難させたい。夏休みだけでも放射能のない愛知に受け入れてもらえないか」という話をされました。
その後も、子ども達や福島の現状、今何が必要なのかなどを話し合い、子ども達を愛知に一時疎開させる事が、一番のベストという結論に達し、具体的にいつから、どこの子ども達を何人、何日間預かるかという事になりました。そんな時、煙山さんから私に一人の人を紹介されました。
 
その人は、堀池さんという二十代の女性で、福島県伊達市霊山町に住まれ、煙山さんと同じように、子ども達を放射能から守ろうと一生懸命支援活動されている人でした。何年か前に伊達のまちが気に入り引っ越してこられ、まちや地元の人達の為に働いていた矢先に、震災と原発事故に遭遇したのでした。
大学で農業や環境などを勉強されていたみたいで、放射能に対する危機感は人一倍に持たれてみえました
そんな堀池さんが、出来れば放射線量が高くホットスポットといわれている霊山町の子ども達を、愛知にぜひ行かせてあげたいと言う強い願いを持たれていました。
 
ホットスポットと言われる伊達市霊山町は、ゆったりとして山と緑に囲まれた風景の美しい所です。しかし、そこには目に見えない物質が存在しており、放射線計であたりを計ると赤いランプが点滅し警報音が大きく鳴り響きます。全村避難している飯舘村と放射線量がほとんど変わらない地域も場所によってあります。
外で遊んでいる子どもは一人もいません。学校や出かける時は、車を使い、長袖、長ズボン、マスクに帽子のスタイルです。鳥たちや虫たちは何もわからず楽しそうに飛びまわり、かわいらしく鳴いています。子ども達は家に閉じこもり、不自由な生活を送っています。
外で何不自由なく遊び駆け回り、泥だらけになったあたりまえの子ども達の生活が突然消えたのです。子ども達はどんな思いでいるのだろう?と子どもを見詰めていた時、あるお母さんが「外で思いっきり遊び駆け回りたいのにそれが出来ない子どもに、あれしちゃダメこれしちゃダメと云い聞かせ,その度に不満そうな顔をして親にあたってくる子に、また叱らなければならない親も本当に辛いんです」と涙ながら心情を話してくれました。親や子ども、その家族のどうしようもない、いたたまれない気持ちをまのあたりにしました。
 
そのような福島の現状を体感した時、子ども達を愛知に招く気持ちが絶対のものになりました。子ども達やその家族に笑顔を必ずプレゼントしようという気持ちが沸き上がり、その為には短期ではなく長期で、経費も一切かからないものにしようと思いました。
日程は8月1日~23日までの23日間、対象は福島県伊達市霊山町の子ども達、人数は30人~40人と決定。その為の準備がスタートするのでした。
 
しかし、いざ行動となった時、現実が目の前に壁となってやってきました。あまりにも時間が無いという現実です。夏休みは目の前、7月の1カ月間で準備から開催までもっていけるのかという不安が、私の心に暗雲となって広がっていきました。常識的にいえば、とても開催まで持って行くのは無理な話です。その時、子ども達やその家族の喜んでいる笑顔が浮かび、それが一筋の光となって私の心に突き刺さりました。絶対にやる、やって見せるという信念が生まれ、わずか1カ月間の突貫工事ならぬ突貫準備が始まったのです。
 
まず受け入れ先です。夏休みはどこの公共施設もいっぱい。ましてや費用をあまりかけず長期に借りられるところは皆無でした。そこで、私の住む春日井に名刹といわれ国宝の多宝塔があり、宿坊を持っておられる天台宗のお寺“密蔵院”の田村圓心ご住職に、「福島の子ども達の為に宿坊を貸して頂けませんか」とお願いしてみました。するとご住職はすぐに「困っている人を助けるのが本来寺の役目」と言って快諾下さり、それと併に 福島の子ども達がこちらに来て少しでも居心地が良いようにと、宿坊に空調設備を取り付けて下さったり、施設の各箇所を修繕されたりと、物心両面で支えて下さいました。この事は現在も尚続いています。
それと、以前から親交があり、オリンピックなどで多くのメダリストを育てている大府市の至学館大学にも打診。こちらも同じように宿泊を引き受けて下さいました。また、宿泊場所だけでなく、プールや食堂、運動場などの施設の提供をはじめ、職員や学生さんなどが一緒になってキャンプ中のお手伝いをして下さいました。
これは余談ですが、この学校の生徒さんは、来訪者などには生徒一人ひとりが必ず、「おはようございます」「こんにちは」ときちっと挨拶をされます。今の若い人たちの中になかなか挨拶が出来ない人もおり、ましてや大学の構内で誰でもが気持ちよく挨拶をしてくれる風景は、あまり体験することは無く、知識だけでなく、人間性も育んでいる素晴らしい大学だと感じました。
 
さて、話を戻しますが、宿泊場所と同時に、しなければいけないのが子ども達のお世話をする人達です。そこで、至学館大学の谷岡学長を通して知る事になり、被災地支援の為に、愛知の学生などをとりまとめ現地でボランティア活動に励んでみえた学生ポランティアグループ“愛チカラ”代表の石原さんに協力をお願いしました。
被災地でのボランティアも大変の中、石原さんは、福島の子ども達の為にとメンバーを募ってくれました。
 
続いて食料や備品の確保、プログラムの作成、それに基づく準備などでしが、とにかく次から次へとしなければならない事が湧水のように沸いてきます。
この頃、子ども達のキャンプ中にかかる経費はこちらが持つとしても、交通費までの経費負担(数十万)を捻出する事は現状かなり厳しく、そこをどうするかが課題になっていました。そこで伊達市に支援のお願いに伺い、鴫原副市長が対応して下さり、伊達市の子ども達の為にと気持ちが重なり、伊達市が交通費を補助して下さる事になりました。本当にありがたかったです。
これで、子ども達やその家族が負担する経費はキャンプに関しては一切なくなり、経済的に大変な人も安心して参加してもらう事が出来ました。
 
食料や備品の準備も、密蔵院の支援や私の方の関係者の協力でどうにか開催まではこぎつける段階まで来ました。
福島では、堀池さん、そして頼れる石上さんも加わり、伊達市霊山町の小国地区の子ども達を中心に参加者を募ってくれていました。
7月下旬、参加者の事前説明会を、霊山町の小国地区の会館で開催。会場では保護者と共に子ども達もいて、みんなどんな人が来たのかと、一斉に見つめられるような感じを受けました。
お父さん、お母さんにとっては長期にわたって子どもを愛知に預けるわけですから、事前になってもきっと不安でいっぱいだったと思います。実際のミーティングでもいろいろな質問や要望が出されました。
私は行く前に、説明会で意見や要望が出たら、出来るだけそれに耳を傾け、対応出来るようにさせてし頂こうと思っていました。何故なら、日頃辛く不自由な生活をしているのだから、せめて愛知にいる時ぐらいは、お父さん、お母さん、そして子ども達の要望に応えて楽しく過ごさせてあげたい。身も心もきれいになってもらい、笑顔の花を咲かせたいという願いがあったからです。
 事前説明会をする事によって、皆さんの不安の心をだいぶ取りはらう事ができ顔が和らいだようにみえました。
終了後は、小国の方が福島駅まで送って下さり、その車中も、小国や福島の現状、みなさんの心情を聞き、福島の子ども達の命と健康を守りたいという思いが、一層大きく燃え上がりました。
 
ちなみに名称は、福島の子ども達は長いのでシンプルに福島っ子とし、キャンプのようにワクワクドキドキ感を出す意味で、そして、夏なのでサマ―をつけて『福島っ子サマーキャンプ』になりました(笑)
 
7月の1ヶ月間でどうにか開催までもっていきました。常識的には考えられないような出来事です。福島の子ども達を助けたいという思いを持った人達が支えあい助け合ってここまできました。突貫工事的な1カ月間での準備。よくここまで出来たと自分を誉め讃えていましたが、しかし、この大変さ忙しさがが、関係者間のコミニュケーション不足を生み、後に運営においてある問題を抱えてしまうことにもなりました。それはまたのち程。
 
 さあ、いよいよ福島の子ども達が愛知にやってきます。
8月1日~8月23日の23日間の長期キャンプ。第1陣はまず21人、一週間後には第2陣も到着し。35人の子ども達がキャンプに参加します。
みんな初めての経験。まさしく未知との遭遇です。23日間のキャンプは、福島の子ども達にとっても、主催者の私達にとっても、協力して下さった関係者にとっても、まさに何が起きるか、何が生まれてくるのか、期待と不安が交差するなか、子ども達を迎えることとなりました。
つづく
次回は、福島の子ども達がやって来た!不眠不休のスタッフ、トラブルも続出。どうなる福島っ子サマ―キャンプ編です。

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